はじめに
相続が発生した際、多くの方が見落としやすい重要な手続きの一つが「準確定申告」です。被相続人(亡くなった方)が生前に得ていた所得について、相続人が代わって行う最後の確定申告であり、期限が短く、手続きを誤ると延滞税や加算税が課される可能性もあります。準確定申告とは何か、対象となるケース、申告期限、必要書類、具体的な手続き方法、注意点、専門家に依頼するメリットまで詳しく解説します。
準確定申告とは
準確定申告とは、被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が被相続人に代わって行う確定申告のことです。正式には「死亡した者の所得税の確定申告」と呼ばれ、所得税法第124条に基づいて行われます。通常の確定申告は本人が行いますが、死亡により本人が申告できないため、相続人が共同して申告・納税を行う点が特徴です。
準確定申告が必要となるケース
被相続人が次のような所得を得ていた場合、準確定申告が必要になります。
- 自営業者・フリーランスで事業所得がある場合
- 不動産収入がある場合(賃貸収入など)
- 年の途中まで給与を受け取っていた場合
- 年金収入が一定額を超える場合
- 株式や不動産の譲渡所得がある場合
- 医療費控除・雑損控除・配偶者控除などを適用する場合
一方、会社員で年末調整が済んでおり、追加の所得や控除がない場合は、準確定申告が不要となるケースもあります。
準確定申告の期限
準確定申告の期限は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内と定められています。通常の確定申告(3月15日まで)よりも短いため、早めの対応が重要です。この期限までに、申告書の提出と所得税の納付を完了しなければなりません。期限を過ぎると、無申告加算税・延滞税が課される可能性があります。
申告義務者は誰か
準確定申告は、相続人全員が連名で行うのが原則です。代表相続人がまとめて申告・納税することも可能ですが、各相続人が連帯して納税義務を負います。相続放棄をした人は、原則として準確定申告の義務はありません。
申告先の税務署
準確定申告は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に提出します。相続人の住所地ではない点に注意が必要です。
準確定申告の対象期間と計算方法
対象となる期間は、
- その年の1月1日から死亡日まで
死亡日以降に発生した所得(相続後の家賃収入など)は、相続人自身の所得として通常の確定申告で申告します。
準確定申告の手続きの流れ
① 相続人の確定
まず、戸籍収集により相続人を確定します。申告書には相続人全員の署名が必要です。
② 被相続人の所得内容を調査
- 給与所得の源泉徴収票
- 年金の源泉徴収票
- 不動産収入の明細
- 事業収入の帳簿
- 株式売却の取引報告書
などを集め、死亡日までの所得を把握します。
③ 控除の確認
医療費控除、社会保険料控除、配偶者控除、生命保険料控除など、生前に適用できる控除を確認します。準確定申告でも通常の確定申告と同様に各種控除が利用可能です。
④ 申告書の作成
確定申告書B様式を使用し、氏名欄に「被相続人 ○○○○ 準確定申告」と記載します。付表として「相続人の付表」を添付します。
⑤ 税務署へ提出・納税
書面提出、電子申告(e-Tax)、郵送のいずれかで提出します。納税は相続人が連帯して行いますが、代表者がまとめて支払うのが一般的です。
必要書類一覧
- 確定申告書(準確定申告用)
- 相続人の付表
- 被相続人の源泉徴収票・年金通知書
- 医療費の領収書・明細書
- 生命保険料・社会保険料控除証明書
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票
準確定申告と相続税申告の関係
準確定申告で納付した所得税は、相続税の計算において「債務控除」として相続財産から差し引くことができます。一方、還付金が発生した場合は「相続財産」として相続税の課税対象になります。
よくあるトラブル・注意点
期限切れ
4か月という短期間のため、財産調査や相続放棄と並行して進める必要があります。
所得の見落とし
不動産収入や株式売却益を見落とすと、後日追徴課税を受ける可能性があります。
相続人全員の署名漏れ
連名申告が原則のため、署名漏れがあると受理されません。
専門家に依頼するメリット
税理士に依頼すれば、
- 所得調査から申告書作成まで一括対応
- 控除漏れの防止
- 相続税申告との連携
が可能になり、期限切れや申告ミスを防ぐことができます。相続登記や財産調査と併せて、司法書士・税理士の連携による対応も有効です。
まとめ
準確定申告は、相続発生後4か月以内という短期間で行う重要な税務手続きです。対象となる所得や控除を正確に把握し、期限内に適切な申告・納税を行うことで、不要な税負担やトラブルを防ぐことができます。不安がある場合は、早めに相続と税務の専門家へ相談することをおすすめします。
ご不明点などございましたら、お気軽にご相談ください。
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